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Die Meistersinger von Nürnberg

 いつもそういう幸運な舞台体験ばかりにあたるわけじゃないんだけれど、オペラを観ていて、何も考えずに物語の世界にストンと入ってしまうことがある。バイロイトでの観劇4回目にしてこのマイスタージンガーはその幸運な体験の一つになったなあ、と終演後まだその物語の中にいるような気分が続いている。

 そんなわけなのでまた考察することもなくつらつら備忘録的に。

・名演出だと思う。洗練とノスタルジックの混在。もの凄く重層的。なんども観たくなるような、隠された意味を捜してしまうような。この楽劇を・素晴らしい演奏を楽しみながら、頭の芯で暗いものを読み解くような不思議な感覚になった。一幕の登場人物をワグナー・ヴァンフリートのサロンに実際にいる人々・そしてワグナーが頭の中で紡ぎだした人物の混在が演じるという劇中劇的な部分からもうぞくぞくしてしまう(ワーグナーがザックス、コジマがエーヴァ、リストがポーグナー、ピアノから出てきたワーグナーがヴァルター、レヴィがベックメッサー、女中がマクダレーネというわけ)。特にユダヤ人指揮者であるヘルマン・レヴィにベックメッサーを演じさせるというところからの導入が見事。

・フォークトさんの生オペラはたった3回しか聴いていないけれど、こんなにくらくらっとしたのは初めて。ふわっと包まれるような豊穣な声にうっとり。初演時のNYタイムズの劇評ではハーフスロットル、と評されていたが、この日は全くそんなことなく一幕から完全にフルスロットルだったと思う。このまま最後まで保つかしら・・・との心配も杞憂。

・フォッレさん。映像でしかみていないが、前回のマイスタージンガーでのベックメッサーの怪演が印象的だったので、キャストが発表された当初、え?ザックス?と少々ミスマッチに感じてしまっていた。すいませんすいません。当時に比べてふくよかになられているのかな?最後のザックスの演説の温かいこと。いつまでも聴いていたかった。あ〜もう終わってしまう・・・と違う意味で涙してしまったよ。

・Kränzleさん演じるベックメッサー、この演出のせいかもしれないけれど、可愛そうなんだけど可愛らしい(変な日本語だw)。

・どの幕も最後にぞわり、とさせられるんだけど、特に一幕ラスト。ヴァンフリートのサロンが後ろへ下がって行くと、そこには突然600号法廷が姿を現す。連合国の旗に冷たい蛍光灯の光、そして兵士。それまでただ楽しい気分で観ていたのが一瞬にしてヒヤリ、と鳥肌が立った。この瞬間のぞわぞわ感を少しでもきちんと味わうために、ニュルンベルグ裁判所へ足を運んだんだ、と思った。もちろん、ドイツはじめヨーロッパの人たちの感じ方の半分もできていないだろうけれどね。
Die Meistersinger von Nürnberg_e0164774_21444092.jpg
Die Meistersinger von Nürnberg_e0164774_21451566.jpg
ConductorPhilippe Jordan
DirectorBarrie Kosky
Stage designRebecca Ringst
CostumesKlaus Bruns
Choral ConductingEberhard Friedrich
DramaturgyUlrich Lenz
LightingFranck Evin
Hans Sachs, SchusterMichael Volle
Veit Pogner, GoldschmiedGünther Groissböck
Kunz Vogelgesang, KürschnerTansel Akzeybek
Konrad Nachtigal, SpenglerArmin Kolarczyk
Sixtus Beckmesser, StadtschreiberJohannes Martin Kränzle
Fritz Kothner, BäckerDaniel Schmutzhard
Balthasar Zorn, ZinngießerPaul Kaufmann
Ulrich Eisslinger, WürzkrämerChristopher Kaplan
Augustin Moser, SchneiderStefan Heibach
Hermann Ortel, SeifensiederRaimund Nolte
Hans Schwarz, StrumpfwirkerAndreas Hörl
Hans Foltz, KupferschmiedTimo Riihonen
Walther von StolzingKlaus Florian Vogt
David, Sachsens LehrbubeDaniel Behle
Eva, Pogners TochterAnne Schwanewilms
Magdalene, Evas AmmeWiebke Lehmkuhl
Ein NachtwächterKarl-Heinz Lehner

by tigersandcatlover | 2017-08-22 13:00 | 17/ZRH-MUC・バイロイト


舞台と音楽と本と、ときどき旅行。


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