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極北 マーセル・セロー

 久々に貪るように読んだ一冊。
極北 マーセル・セロー_e0164774_1993935.jpg
 人類が絶滅への階段を降りていく中、極北の街で一人暮らす語り手。想像したくない近未来の世界。でもこういう日が自分の生きてるうちには来ないって誰が言える?「人は誰しも、自分が何かの終末に居合わせることを予期している。誰も予期していないのは、すべての終わりに居合わせることだ」という一節が重い。

 次から次へとびっくりするような展開が続いて頁を繰る手が止まらない。かと思うと生活(それは必ずしも平和で楽しいだけのものではない)のディティール描写が実にリアルで繊細だったりする。ああ、いろいろ書きたいけれど、これはもう読んだ人と語り合いたい~という他ない。

 まさに一気読み。それは村上春樹氏の訳ゆえだけではなく。っていうか、今回は珍しく、他の彼の訳本ではそこはかとなしに伝わってくる村上節が全く気にならなかった(しばしば用いられる強調点の部分では「あっ、そうやった、むらかみさんやった」と我に返ったりしたけれどw)。それほどまでに物語に没頭してしまったと言うことなのだろう。
# by tigersandcatlover | 2012-04-13 23:00 | 読書

ジキル&ハイド

 ミュージカル ジキル&ハイド を観た。誰でも知ってるであろうロバート・ルイス・スティーヴンソン原作の物語にワイルドホーンの音楽。
ジキル&ハイド_e0164774_005062.jpg
原作:R・L・スティーブンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・作詞:レスリー・ブリカッス

演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎

ジキル&ハイド:石丸幹二
ルーシー:濱田めぐみ
エマ:笹本玲奈
アターソン:吉野圭吾
ストライド:畠中 洋
執事プール:花王おさむ
ダンヴァース卿:中嶋しゅう

プループス卿:KENTARO 
グロソップ将軍:石山毅
サベージ伯爵:石飛幸治
ベイジングストーク大司教:若泉亮
ビーコンズフィールド侯爵夫人:岡田静 

 堂に入った貴婦人ぶりの玲奈ちゃんと、セクシーなのに無垢さがふと滲み出る濱田さんという女性陣にほれぼれ。吉野さんが珍しく(笑)裏のない好青年ぶりを見せてくれたのも新鮮やったなぁ。石丸さんのハイドは正直ちょっと心配だったんだけど、もちろん杞憂でありました。特に初めてハイドに変わってしまうシーンではゾクゾクしてしまったほど。でも個人的には「ニュー・ブレイン」(リンクは拙日記)のときような、ちょっとヘタレな可愛い役がまた観たいな〜。

 セットは一見シンプルで実験室以外は場面展開も大掛かりではないが、階段を巧くつかっていたかな。照明を客席に向けるという演出が何度もあったのだけれど、ちょうどそれが直接目に入る席に座っていたため、その瞬間は目を開けていられなかったのが難。

 この日は終演後、指揮の塩田さんが進行役で、石丸さん・濱田さん・玲奈ちゃんのトークイベントがあった。面白かったのは三人三様の本番前の準備時間の違い。6時間前から高い声をつくっていく石丸さんに、三時間半前には楽屋入りする濱田さん、そしてちょうどその時間帯まで寝ている玲奈ちゃん、といった具合。そして何度も演じているうちにいろんなことが「腑に落ちてきた」という三人の言葉などなど。
# by tigersandcatlover | 2012-04-08 23:57 | ミュージカル

戦火の馬

 スピルバーグ制作・監督の映画 戦火の馬 (原題;War Horse)を観た。マイケル・モーパーゴが1982年に発表した小説が原作で先に舞台化もされている。

 貧しい農家の少年アルバートの家にある日、サラブレッドがやってくる。農耕馬を買うための競りに出かけた父が一目惚れして買ってしまったのだ。ジョーイと名付けられたその馬はアルバートと信頼関係を結んで行くが、第一次世界大戦の始まりとともに、軍馬として売られて行ってしまう・・・。
戦火の馬_e0164774_17385124.jpg
 始めはイギリス軍、そしてドイツ軍へ。その主は変わっても馬たちは事情がわかるはずもなく、ただ言われるまま前に進むだけ、黙々と生きて行くだけ。その半ば使い捨てのようにされていく姿が辛い。でもよくよく考えるとそれは一兵卒などの若い軍人も同じなんだよな。ああ〜、わかっちゃいるけどしんどいなぁと思いながら観ていた。そのしんどさが強くて、「泣き」のシーンも心から、というわけにいかんかった。いや、もちろん静かには泣けたんですがね。

 甘っちょろいと言われそうだが、戦争を扱った映画や舞台はいつだってしんどい。だからだろうか、去年NYへ観劇旅行(ええもうそう言っちゃっていいでしょうw)したときに、この物語の舞台版のポスターをあちこちで見かけたものの、そのときはあまり興味が湧かなかったのだった。惜しいことしたかな。さて次なるチャンスはありますかどうか。舞台はナマモノやからねぇ。
# by tigersandcatlover | 2012-03-28 22:32 | 映画

とるにたらないものもの 江國 香織 著

とるにたらないものもの 江國 香織 著_e0164774_1656286.jpg こういう本は江國さんの独壇場だよな~と思う。

 鞄、食器棚、輪ゴム、運動靴、鉛筆、バスタオル、、、。生活のディテールを彩るものに対してのほんの数ページの意味づけ。読み終わったあと<そのもの>を見ると彼女の視線が留まったあとのような錯覚に。なんかマーキングみたい。

 図書館で借りたのだったか、友人に借りたのだったかで一度は読んでいたのだけれど、手元に残したくて文庫を買った。一時期、旅行のたびに彼女の既読の本を一冊鞄に入れて出かけていたことがあったっけ。「ホリー・ガーデン」とか「ウエハースの椅子」とか、そのくらいの時期の作品を、それも単に主人公の日常のこまこましたシーンを読み返したいだけの気持ちで。この本とそんなふうに一緒に出かけることになるかはわからねど、そんな思惑もあり。
# by tigersandcatlover | 2012-03-27 23:00 | 読書

秀山祭三月大歌舞伎

 関西で初めてとなる秀山祭を南座まで観に行ってきた。今回の公演は三代目 中村又五郎(中村歌昇改め)と 四代目 中村歌昇(中村種太郎改め)の襲名披露公演となる。
秀山祭三月大歌舞伎_e0164774_1047345.jpg
 我々が観たのは午後の部。16時半開演〜20時終演、途中休憩も約1時間と歌舞伎公演にしては少し短め。

〜この日の演目〜
秀山祭三月大歌舞伎_e0164774_10493011.jpg
一、俊寛

  俊寛僧都    吉右衛門
  海女千鳥    芝 雀
  丹波少将成経  種太郎改め歌昇
  平判官康頼   吉之助
  丹左衛門尉基康 錦之助
  瀬尾太郎兼康  歌 六


 悲しみの演技が似合う吉右衛門さんの俊寛。よたよたとのたうち回って嘆き悲しむさまに歌舞伎観劇では珍しくホンマにもらい泣きしてしもた。直後の口上では少しお疲れのご様子?「流刑地から戻りましたところで」と笑いを誘ってはりました。

二、口上
  歌 昇改め又五郎
  種太郎改め歌 昇
  幹部俳優出演


  播磨屋の役者さんたちの他、愛之助さんに翫雀さんたちを加えての口上。

三、新歌舞伎十八番の内 船弁慶

  静御前/平知盛の霊  歌 昇改め又五郎
  源義経       愛之助
  舟子岩作  種太郎改め歌昇
  同浪蔵       壱太郎
  亀井六郎       桂 三
  片岡八郎       種之助
  伊勢三郎       米 吉
  駿河次郎       隼 人
  武蔵坊弁慶       翫 雀
  舟長三保太夫      吉右衛門


 又五郎さんは静御前の静かで哀しい舞と知盛の霊の荒々しさとの対比で見応え十分。

 恥ずかしながら「能楽もの」って結構眠くなってしまうことが多い(今回も前段の静御前の舞ではちと危なかった)。が、漁師たちが出てくる間狂言のあたりから変化がぐぐっと出てきて後段の盛り上がりにつながっていくので全く飽きなかった。幕が引かれてからの知盛の花道での舞は、ちょうど花道真横の席だったこともあり、安全と分かっていても本能的に身体をよけてしまうほどの迫力。悪霊退散!とばかりに必死に吹き鳴らす笛と太鼓との掛け合いも面白かったなあ。
# by tigersandcatlover | 2012-03-25 11:01 | 歌舞伎・文楽


舞台と音楽と本と、ときどき旅行。


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