人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ゴーギャン展2009

 さて、連休最後の海の日。東京国立近代美術館で開催されているゴーギャン展2009へ。

 昨年秋に、バルガス・リョサ著 楽園への道(リンクは拙なる読書日記)を読んだ。この本はポール・ゴーギャンと、その祖母であるフローラ・トリスタン(労働組合の設立のためにフランス国内を奔走し、若くして逝去)の人生を、一章ごとに交互に物語を進めるかたちで、浮き彫りにしていく物語だ。ストイックに自分の理念を曲げず突き進んでいくフローラと、気持ちの赴くまま、これまた自分の欲望を決して曲げず半ば堕ちていくポール。この対照的な一方、ものすごく似ている二人の人生にクラクラした。その後、いくつかの展覧会や、美術館でゴーギャンの作品を観る機会があったが、それまでとは全く違う目で観てしまう自分がいた。作品の後ろに彼の人生を見てしまう、というか。もちろん、そういう風に芸術を鑑賞する楽しみを知っている人は多いだろう。けれど、舞台であれ、小説であれ、その作品の作者の人生をここまで透かしてみてしまうことは、私にはなかった。そんなわけで、ゴーギャンの絵そのものも勿論だが、彼の堕ちていく人生の片鱗が見たくて、一日余分に東京滞在して、この展覧会に行くことにしたんだった。もちろん、芸術新潮もしっかり買って読みましたよー。ああ、長い前置き。

 東京駅から近代美術館まではシャトルバスが運行されるということで、荷物をコインロッカーに入れて始発のんで行こう!と張り切っていたが、ここで目算が外れる。まず、駅構内のロッカーの空きがない!いや~、連休の東京って凄いねえ。カートをゴロゴロ転がす観光客が血眼になってコインロッカーを探している。ちょっと怖い光景でありました。もう荷物持って歩くか!と途方に暮れていた私の目の前で、荷物を出している女性がいたので、じっと後ろで待ってなんとか確保。そして、次はシャトルバス乗り場の場所がわからへん!八重洲口を出てしまったのだが、どうやら、日本橋口で発着するとのこと。まあ、そう言っても同じ一つの駅の出口だからそんなに距離はないだろう、と普通の駅の感覚で歩き出したのだが、いつまで東へ歩いても到達しない。なんか不安になってきたなあ~と半分くらい戻ってしまったり。結局、普通の駅のホーム三つ分くらいの距離を歩いてようやく到着。いや~、東京駅って大きいんだねえ。乗り場につくと、そこはすでに大行列。二台乗り過ごしてようやくバスに乗り込んだ時にはすでに10時半を回っていた。あ~疲れた。

 それでも会場の入り口はそれほどの混雑ではなく、すっと入れてほっとした・・・のもつかの間。中は大混雑。それも、初期のブルターニュでの作品~第一期タヒチ時代~ノアノアの原画のコーナーまでは大変なことになっていた。これ、入場制限したほうがええんとちゃうか?あまりのことに、呆然としながら、ええい、ともかくこれだけは観よう!と満員電車の中を掻き分けるようにして、我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか の展示スペースへ向かう。ここだけはこの一つの作品のために、巨大なスペースを用意してあったのでゆっくりとぐいぐいと前に行って最前列でじっくり鑑賞できた。
ゴーギャン展2009_e0164774_12145117.jpg
やはり、これはゴーギャンの集大成なんやな~。これまでの彼の作品で繰り返し登場したモチーフ大集合。そして、これまでどちらかというと、ちゃらんぽらんで下半身だけで生きていて家族を省みることなどなかった彼が、娘を亡くした絶望からキャンバスに向かった作品と思うと余計に。まあ、身勝手極まりないわけだけどね。

 そのあとの最後の部屋までくると案外空いている。やや拍子抜けして、ここはじっくり堪能。ファア・イヘ・イヘ(おめかし)とか浅瀬(逃走)とか。このへんの作品が一番好きかも。
ゴーギャン展2009_e0164774_12223288.jpg
このファア・イヘ・イヘ。なんか違和感?と思っていたら、タヒチ時代のゴーギャンの作品の中では珍しく、鮮やかな青が全くない。赤銅色の世界。図録などでみると、我々は~と同じような横長なので、大きい作品を予想していたら意外と小ぶり。

ゴーギャン展2009_e0164774_12262183.jpg
 さすがにあまりに駆け足で最後まで来てしまったので、その後逆行して、かぐわしき大地(18歳の時に大原美術館で初めて観たのをよく覚えている)や、それとごくごくテーマが似通っている異国のエヴァに見入る。つくづく、ゴーギャンって同じようなポーズの絵をたくさん描いてるなあ。まあ、画家はすべからくそうですわね。みんなしつこいくらい、同じテーマ、同じ構図を延々呪われたように描き続けてるもん。あれ、どうしてなんやろう。いつまでも自分の思う完成形にならないからなんだろうか。




ゴーギャン展2009_e0164774_18173.jpg
 そして純潔の喪失(テーマはさておき、色合いが美しい)や、海辺に立つブルターニュの少女たち(この頃から、タヒチ時代の片鱗が垣間見えている)、ノアノアに収録された版画なんかも結局全部みてしまった。それでもやはり、後ろへいくほど空いている展覧会だったなあ。単に動線の問題なのかもしれない。

 
 ところで、余談だが、予想と違った点がいくつか。
1)当初、この展覧会はゴーギャンの作品発表順ではなく、テーマごとにまとめて展示されると聞いていたような気がする。ところが、ばっちり順列だった。いや、それだけ、ゴーギャンの生き様が絵に現れているんだろう。絵のテーマと人生が切り離せないくらいに。
2)会場は作品の保存のためにかなり寒くなっているとのことだったが、これが全く予想外。むしろ人いきれで暑苦しいくらいだった。人間ってむちゃエネルギー発生してるんやわー(ここで、ふと映画マトリックスを連想してしまった)。
ゴーギャン展2009_e0164774_17442918.jpg3)それほど期待してなかった所蔵作品展『近代日本の美術』が案外よかった。空いてたし。藤田嗣治のパリ風景(1918年作;彼がパリに移り住んで数年後の作品で、泥水のようなパリの中を手押し車を押した男が歩いている)や、川田喜久治写真群ラスト・コスモロジー(モノクロの写真たち。偶然にもタヒチのゴーギャン美術館の一枚もあった)が印象深かった。

・・・さっ。次は初台だ!
by tigersandcatlover | 2009-07-24 07:00 | 国内旅行


舞台と音楽と本と、ときどき旅行。


by tigersandcatlover

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

カテゴリ

徒然やら日記やら
おでかけ
ミュージカル
歌舞伎・文楽
その他の舞台
読書
映画
野球(タイガース)
外食しました。
Sweets中毒
医療のハナシ
国内旅行
海外旅行 アジア
09/パリ・北欧・伊・VIE
10/AMS・パリ・VIE
11/NY・ロンドン・ドイツ
12/ ロンドン・スイス・NY
13/VIE・EDIetc・MUC・NY
14/NY・GVA・NY
15/NY・VIE・London・DRS
16/NY・SZGバイロイト・Paris
17/ZRH MUCバイロイトLA NY
18/ベルリン・パリ・NY
19/NY・London

タグ

(149)
(148)
(105)
(101)
(63)
(42)
(35)
(24)
(19)
(18)

リンク

フォロー中のブログ

むさじんの部屋
黒川雅子のデッサン  B...
♪♪♪yuricoz c...
mad about th...
vie naturell...
ひつじのお散歩
猫でいろいろ
バリ島生活を夢見て・・・...
liliaの 瞬間湯沸かし記
白日記
マダム日記デラックス2 ...
salon de luxe
SoCute, SoSw...
Mizuma Art G...
マダム松澤のクリスタルルーム
一寸先のキキ
Okei's Next ...
おいしい暮らしと楽しい記憶
ソプラノ 山口和子のブロ...

以前の記事

2021年 12月
2021年 11月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
more...

最新のコメント

こんにちは。 私も京都..
by desire_san at 08:38
みやさま いやホン..
by tigersandcatlover at 17:31
お奨めした手前、×だった..
by lilymiya at 14:20
みやさま 図書館待..
by tigersandcatlover at 16:21
図書館の予約待ちがなかな..
by lilymiya at 15:51
藍色さま コメント..
by tigersandcatlover at 15:56
なんとなくすっきりしない..
by 藍色 at 13:35
ユートーモさま コ..
by tigersandcatlover at 20:08
突然失礼します。 コン..
by ユートーモ at 17:20
あっくん どっちも..
by tigersandcatlover at 18:00

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

旅行・お出かけ
演劇

画像一覧